物流現場取材シリーズ【11】
株式会社クラシコム様
サステナブルな企業が語る、
フィットする物流業界の作り方


左から高尾様、川村

東京都国立市に拠点を置く株式会社クラシコム(以下、クラシコム)は、ライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営しています。2022年には東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たされました。

今回は、クラシコムの執行役員であり、ビジネスプラットフォーム部長である高尾様にお時間を頂き、株式会社ロジテック代表取締役の川村がお話を伺い、荷主と物流会社の関係について対談しました。

幅広い年代から支持を集めるプラットフォームへ

川村 まず、クラシコムさんのビジネスについてご紹介いただけますでしょうか。

高尾 ありがとうございます。私たちクラシコムは、ライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営しています。北欧をはじめとした世界中の商品やオリジナル商品もEC販売しています。

「北欧、暮らしの道具店」の特徴は、「フィットする暮らし、つくろう。」をミッションに掲げ、読み物や動画、映画など多様なコンテンツを通じて、一貫した世界観を提供している事だと思います。

川村 フィットする暮らしとはどういうイメージでしょうか。

高尾 「自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できること」をフィットする暮らしと定義しています。「北欧、暮らしの道具店」の世界観を通じてお客様はもちろん、社員のフィットする暮らしも一緒に実現したい、それがクラシコムの企業理念です。

川村 ECサイトを拝見しますと、アパレルも扱っていらっしゃるんですね。

高尾 はい、「KURASHI&Trips PUBLISHING」や「NORMALLY」といったオリジナルブランドを展開しています。

川村 顧客層は若い人たちになりますか。

高尾 いえ、年齢層は非常に幅広いですね。中心は30~40代の女性だと思いますが、60代以上のお客様や、高校生、大学生もご利用されています。

川村 この対談記事を読まれるのは年配の方が中心です。「北欧、暮らしの道具店」を知っていれば、奥様や娘さんへのプレゼント選びに役立つかもしれませんね。

高尾 ブランドの認知調査をしますと、最近は男性の認知も広がっています。旅行や非日常的な体験を暮らしに取り入れることをコンセプトにしたブランド商品も扱っているからでしょう。男性の方々にも段々と興味を持っていただけているのは嬉しいですね。

成熟を信じ、成熟に支えられ、新たな「3つの期待」を胸に進む──代表×店長が振り返る、クラシコムの歩み(7)2023年版社史 | クラシコム
ビジネスの成長に加えて、テレビドキュメンタリー番組にも初めて登場。人気経済番組『日経スペシャルカンブリア宮殿』の特集や、朝の情報番組『THETIME,』の出演といったパブリシティを経て、クラシコムや「

ビジネスの基盤づくりとクラシコムの戦略

川村 高尾さんは、クラシコムでどのような業務を担当されていますか。

高尾 私の仕事は、クラシコムのビジネス基盤を整えることです。これには、物流、情報システムとセキュリティ、データ分析、カスタマーサポートの管掌などが含まれます。

川村 それは大変な仕事量ですね。物流の実務はどうされていますか。

高尾 物流の実務は外部の倉庫会社に委託していますが、品質管理を含めて密接に関与しています。

川村 物流に関して特に課題はありますか。

高尾 大きな課題というわけではないですが、ECサイトの成長と物流キャパシティのバランスを見極めることが重要ですね。

川村 倉庫会社と上手にコミュニケーションを取れていますか。

高尾 実は、倉庫会社と協力して生産性を高めて、コストを抑えるために、1年前にクラシコムの予算で設備、および倉庫管理システム(WMS)のリプレイスを行いました。          

川村 WMSに投資されているとは驚きました。

高尾 既存のパッケージをカスタマイズしたものではありますが、かなりの労力を掛けるプロジェクトにはなりました。     

川村 社内にそのリソースがあるのですね。

高尾 はい、私たちはECシステムを内製しており、ソフトウエアエンジニアが在籍しています。彼らの協力を得ながらWMSのプロジェクトに取り組みました。

川村 そのWMSは、どのようにカスタマイズされたのですか。

高尾 当社は幅広い製品カテゴリーを取り扱っていることから、ある1日の出荷データの中に、アパレルの単品注文が数百件含まれているのと同時に、雑貨を中心とした、セット率が高い注文も含まれています。

川村 様々な購入パターンに対応する必要があるんですね。

高尾 そうです。例えば、スプーン単体というような購入は珍しいですが、Tシャツ1枚だけ購入するお客様はたくさんいらっしゃいます。

荷主が主導して実現するサステナブルな物流業界

川村 倉庫会社と関わる中で、倉庫業務の効率化や生産性向上に繋がるアイデアを持たれていましたら教えてください。

高尾 業務量の波を小さくすることが重要だと考えています。例えば弊社では、注文が急増した場合、当日発送のご注文締め切り時刻を早めるようにシステムで制御しています。これにより、出荷件数の上限ができ、倉庫側の負担を軽減できるような仕掛けです。

川村 素晴らしい取り組みだと思います。自社でECシステムを開発しているからこそ可能なことですね。

高尾 はい、倉庫の担当者からも、「見通しを立てやすく、人員計画に役立っている」と喜んでいただいています。他にも、現場作業が機械的にできるよう、システム上で必要な情報を提供しています。例えば、「これどうやって梱包すればいいですか」と出荷作業をする方がいちいち確認しなくてすむように、出荷作業に必要な情報はマスターデータに登録しておいて、作業の効率が上がるような状況を作っています。

川村 マスターデータに登録されている情報にはどのようなものがありますか。

高尾 「割れ物に注意して梱包してください」や「この商品はOPP袋に入れて出荷してください」といった指示を登録しています。これにより、入社したばかりの方でもスムーズに倉庫作業に取り掛かれます。

川村 そこまでしますか。一般的な荷主は、倉庫会社に作業を全て任せることが多いですが、クラシコムさんはそこもきちんと管理されていますね。

高尾 物流業界の方々は「荷主さんの要望には何でも応えます」という姿勢でコミュニケーションを取ってくれますが、サステナブルではないと感じることも多いです。私たちは、荷主として、物流会社と一緒に生産性向上施策に取り組むことが重要だと考えています。

川村 サステナブルな視点での取り組みはとても大切です。クラシコムさんのように、外部委託している物流業者さんを含めて事業の持続性を考える荷主は珍しい存在だと思います。

高尾 どこの物流会社でも、生産性を高めれば利益が増えて経営基盤が強くなります。そうすれば、荷主も安心して仕事をお願いできます。双方にとってハッピーではないかと思うんです。弊社は、そうした価値観を大切にしています。

サステナブルな物流業界を実現するための提言

川村 ここまでお話を聞いてきて、クラシコムさんのサステナビリティへの取り組み、特に、それを実現するために自社でWMSの導入を行っている点に注目しました。この方向性を決定したきっかけは何だったのでしょうか。

高尾 私の部署は「ビジネスプラットフォーム部」として、ビジネス基盤の強化に取り組んでいました。WMSへの投資を決断したきっかけとしては、事業が成長して出荷件数が増加し、物流のキャパシティの拡張が必要になったことでした。外部環境としては、人員不足が懸念されていたため、物流会社さんで作業する方を増員するだけでなく、荷主側が投資してでも、生産性をあげる取り組みとして、WMSの導入が必要だと考えました。               

川村 高尾さんは、物流会社さんとサステナブルな環境を実現していくには、何が大切だとお考えですか。

高尾 荷主と物流会社の関係における「要望」と「要求」がアンバランスにならないという事ではないでしょうか。「要望」は荷主側に決定権は無いけど、「要求」は荷主側に決定権があります。難しいことも多いとは思いますが、荷主と物流会社の関係がすべて荷主からの「要求」にならないよう、バランスを正しく保つことが重要だと思います。

川村 物流会社は、荷主の求めることをあまりにも受け入れ過ぎな傾向にあると感じています。そのバランスを保つために、どうされていますか。

高尾 弊社は、「正直・公正・親切」をポリシーとして掲げて、さまざまな場面での判断基準としています。中でも最も大切にしている「正直」とは、嘘をつかず、ごまかさず、率直に伝えることを意味します。お互いに譲れないことはあるとは思いますが、率直に状況を伝えながら、どちらかが無理をするのではなく、双方にとって良い形を探していけたらと思っています。     

川村 おっしゃる通りだと思います。本日の対談を通して感じたことは、クラシコムさんの「フィットする暮らし」を提供するという理念が、お客様と社員だけでなく、取引業者も含めているという事です。サステナブルなビジネス運営というアプローチは、荷主にとっても物流会社にとっても、自分らしい暮らしを実現するための重要なステップだと思います。高尾さんが言うような「正直」さは必要ですね。

本日は多くの学びがありました。ありがとうございました。

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