フィジカルインターネットとは?注目されている理由や実現する価値などを解説

フィジカルインターネットは現在注目されている仕組みで、物流の課題に対する改善化に期待できます。

労働力不足や物流コストの上昇など、企業が抱えている悩みに効果的です。

少子高齢化で労働力が足らない日本だけではなく、世界中で取り組んでいます。

本記事では、フィジカルインターネットの概要や注目されている理由などを解説しています。

取り組みを検討している企業はぜひ参考にしてみてください。

POINT!ここがポイント
  • フィジカルインターネットとは、インターネットのネットワークのように物流の情報や貨物の内容を共有・活用するための仕組み
  • 2050年までに温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いたとき、合計値を実質的にゼロにするのが目標
  • フィジカルインターネットで効率的な物流や万が一の事態に対応できる物流などが実現可能

フィジカルインターネットとは?

フィジカルインターネットは物流効率を上げる仕組みになっていて、経済産業省と国土交通省で計画を進めています。

インターネットのパケット交換を物流に当てはめたシステムで、今後の物流業界では欠かせない構想です。

フィジカルインターネットの概要

フィジカルインターネットとは、インターネットのネットワークのように物流の情報や貨物の内容を共有・活用するための仕組みです。

IoTやAI技術を利用すると、これまで見えてこなかった物流や倉庫、車両などの情報を可視化できます。

情報が見えれば状況に応じた最適なトラックの手配ができて、規格化された容器に詰められた貨物を効率よく輸配送できるのが利点です。

トラックの積載率はフィジカルインターネットの導入前より向上して、排出ガスの削減にも貢献できます。

2050年のカーボンニュートラルの実現

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、省エネや脱炭素エネルギーの利用が求められています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いたとき、合計値を実質的にゼロにすることです。

2019年度でCO2の排出量が11億800万トンあったことがわかり、そのうち運輸部門では2億600万トン排出した記録があります。

そのため、物流業界ではカーボンニュートラルの実現に向けて、効率よく輸配送をするフィジカルインターネットとの相性が良いです。

フィジカルインターネットが注目されている理由

フィジカルインターネットは物流現場に重要な役割を果たすため、注目されています。

電子商取引や人口減少など、社会の変化に対応できる仕組みを活用することで、課題の改善が図れるでしょう。

どのような理由で注目されているのか、それぞれ見ていきましょう。

電子商取引が増加しているから

電子商取引、いわゆるEC市場の成長により、フィジカルインターネットが注目されています。

ラストワンマイルの配送に対する要求が強い傾向があり、納期までに届けるために多くのコストがかかっている現状です。

例えば手のひらサイズの商品をネットで注文した人がいて、積載率が低いままトラックで輸配送するのは非効率と言えます。

しかし、翌日または当日配送のサービスや、時間指定の輸配送による調整などで、運ばざるを得ない状況です。

物販系分野のBtoCは著しく市場規模が拡大していて、今後も需要が高まる傾向が予想されます。

電子商取引の活発化に対応するためには、フィジカルインターネットで効率よく運ぶのが重要です。

注文主より物流事業者を優先した場合、翌日配送のような高品質なサービスが停止する可能性があるでしょう。

人口減少に伴う労働力不足が深刻化しているから

物流の2024年問題としても掲げられていますが、トラックドライバーの不足は深刻です。

少子高齢化の現状もあり、生産年齢人口の減少による労働力不足は各産業で共通した課題になっています。

特にトラックドライバーは他の産業よりも労働環境が整えられず、2024年4月以降は年間収入額が大幅に減少する見込みです。

労働環境の例を挙げると、長時間の荷待ちや荷役作業があり、長距離輸送になると必然的に労働時間が長引きます。

そのため、稼げるイメージが強かったトラックドライバーの確保が難しくなり、労働環境の改善が必要不可欠です。

そこでフィジカルインターネットを活用することで、少ない労働人口でも積載率を向上させて輸配送ができます。

1台で配送できる荷物量を2台で配送するような非効率な輸配送を、未然に防げるのが魅力的なポイントです。

気候変動対策に伴う物流コストが上昇しているから

フィジカルインターネットとカーボンニュートラルが密接な関係にあることで、気候変動対策も大きく関わってきます。

「地球温暖化対策計画」が令和3年10月22日に閣議決定されて、運輸部門では2030年度に2013年度から温室効果ガスを35%削減しなければなりません。

このような温室効果ガスの削減を目指した気候変動対策の傾向が強くなり、物流業界に圧力がかかっています。

しかし、物流コストの上昇は不可避であり、トラックドライバーの確保や運賃の適正化などの課題が多い状況です。

そこで物流や倉庫、車両などの情報を可視化できる、フィジカルインターネットの活用が注目されるようになりました。

フィジカルインターネットがあれば物流現場の改善が図れて、気候変動対策に貢献できます。

フィジカルインターネットを実現する価値

フィジカルインターネットを実現すると、時間・距離・費用・環境の制約から解放され、革新的な社会を実現できます。

実現するとどのような価値をもたらすのか、それぞれ見ていきましょう。

効率性|効率的な物流ができる

フィジカルインターネットを実現できると、効率的な物流ができるようになります。

物流クライシスや物流コストインフレなどの課題に対して、解決する糸口になるでしょう。

効率的な物流が実現できれば、フィジカルインターネットが注目されている背景に対して課題に効果的です。

輸送部門の温室効果ガスの削減や、2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献できます。

フィジカルインターネットを活用すれば、物流に関連する情報の各機能のデータを連携・同期化させることで、最適なサプライチェーンマネジメントを構築できるでしょう。

強靭性|リスクに対して柔軟に対応できる

自然災害等の不測な事態が起きた場合でも、フィジカルインターネットがあれば柔軟に対応できます。

生産拠点や輸送手段、経路などが災害状況によって制限されてしまうでしょう。

そのような時はフィジカルインターネットで企業または地域間で協力・連携すれば、問題なく対処できます。

迅速に情報収集して共有することで、利用できる物流拠点を探してサプライチェーンの寸断を回避した流通が可能です。

突然の事態が起きても物流を止めない構造は、地震が多い日本において重要な役割を果たします。

過去に阪神淡路大震災や東日本大震災などの経験があるため、今後大きな災害が起きても物流を止めない構築が必要です。

良質な雇用の確保|ドライバーの労働環境を改善できる

フィジカルインターネットを実現すると、適性な労働環境に改善できます。

現在はドライバーに対する劣悪な労働環境を提供している会社があり、労働環境が整っていません。

2024年問題でも取り上げているドライバー不足の問題もあり、労働生産性を維持・向上が求められています。

フィジカルインターネットを活用すれば、労働環境の改善を通じて人手不足や物流クライシスなどの課題を解消できるのが強みです。

結果的に経済成長を促進して、良質な雇用の確保につながるでしょう。

好循環な物流事業を展開できれば、企業が成長して従業員に対して十分な賃金を支払えるようになります。

ユニバーサル・サービス|社会インフラの課題を解決できる

フィジカルインターネットを実現すると、ユニバーサル・サービスを提供できる社会インフラを形成できます。

ユニバーサル・サービスとは、全国一律で安定した価格を提供できるサービスです。

例えば少子高齢化によって高齢者に対するサービスの提供が求められていますが、高齢者を支える健常者も重視しなければなりません。

物流においても、地域間の格差で効率的な物流ができない問題があります。

輸送資源の乏しい地域でも、フィジカルインターネットと接続したプラットフォームを活用すれば、効率的な物流サービスを提供できるでしょう。

現在は貨客混載を利用して、どの地域でも輸送資源の効率的な活用に寄与しています。

SDGsにも貢献できるため、フィジカルインターネットに対するユニバーサルサービスの価値が高いです。

フィジカルインターネットの取組事例

フィジカルインターネットに取り組んでいる企業は、世界中で行われています。

物流におけるCO2削減につながり、環境に対して大きな貢献となるでしょう。

どのような企業が取り組んでいるか、事例を紹介します。

ALICE(欧州物流革新協力連盟)

2013年に設立されたALICEでは、温室効果ガスの排出を削減する取り組みを実施しています。

設立時は「2030年に運輸部門の温室効果ガス排出量を30%削減する」という目標を掲げていました。

しかし、低公害車や省エネルギー技術などがあることで、目標達成には間に合わないことがわかりました。

そこで今ある物流リソースを活用して、CO2の排出を抑制する目的を優先しています。

ALICEによると、以下の項目を実施することで、温室効果ガスの排出量を49%削減できると試算しています。

  • 積載効率の向上
  • 直行輸送の増加
  • モーダルシフトの実装

Mixmove社

物流スタートアップ企業のMixmove社は、大手化学品メーカー3社と協力して、ソフトウェアを活用した輸送ネットワークの最適化に取り組みました。

従来は当該地域の欧州、中東、アフリカにおける製品輸送で、効率的な輸送マネジメントができない課題がありました。

理由は物流施設で使用するTMSが異なっていたからであり、トラックおよびコンテナの積載効率が35%〜45%ほどしか満たせませんでした。

そこでMixmove社のソフトウェアにより、物流施設と輸送キャリアをを適切に選べるようになりました。

トラックの積載効率が90%にまで向上するほどの効果があり、CO2排出量を50%削減することに成功しました。

江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社では、共同配送や共同倉庫の利用を推進して、CO2の削減を実現しています。

以前は必要なときに必要な量を発注して納品をするスタイルにより、小口配送が多くて環境負荷がかかる輸送をしていました。

しかし、サプライヤー各社が共同で物流センターを利用することで、大口補充をして積載効率を向上させる仕組みにしました。

結果的にトラック台数とCO2が削減されて、2020年度に経済産業大臣表彰を受賞しています。

まとめ

フィジカルインターネットを活用すると、CO2の排出量を削減できる効果に期待できます。

電子商取引の増加や労働力不足の背景もあり、少なくとも気候変動対策で掲げている2030年度までは注目されるでしょう。

日本の企業だけではなく、海外でも取り組んでいるため、適切な対策が必要です。

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