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【後編】物流業界の現状は結局どう変化するのかをわかりやすく解説

前回の記事に続き、物流業界の現状がどのように変化していくのかを解説します。

物流業界において、2020年代は変化の大きな年でした。

これまで需要がなかった宅配便のサービス価格が急騰したり、燃料価格の高騰があったりしました。

今後は2017年〜2020年度までの総合物流施策大綱ではなく、2021年〜2025年度の総合物流施策大綱に沿った対応が必要です。

POINT!ここがポイント
  • 直近の物流では少量の荷物を運ぶ頻度が多い多頻度小口配送が普及している
  • 時間外労働の上限規制で本来運べた距離までの輸送ができなくなる
  • 総合物流施策大綱の変化で効率的かつ緊急時でも対応できる物流の構築が求められるようになった

直近の物流の動き

直近の物流では多頻度小口配送が普及していて、宅配便のサービス価格が急騰しています。

荷物が多くて人が少ない状況のため、これからは効率的な労働が必要です。

直近の物流の動きを把握して、状況を整理しましょう。

貨物1件あたりの貨物量の推移が減少して物流件数が増加

年数貨物1件あたりの貨物量物流件数の推移
1990年2.43トン/件13,656千件
1995年2.13トン/件15,290千件
2000年1.73トン/件15,964千件
2005年1.27トン/件20,039千件
2010年0.95トン/件24,616千件
2015年0.98トン/件22,608千件

上記の表の通り、貨物1件あたりの貨物量と物流件数の変動が激しいです。

貨物1件あたりの貨物量は減少傾向になっていて、直近の20年では半減するほどの量になっています。

対して物流件数は増加傾向になっていることから、小口配送が急速に進行している状況といえるでしょう。

小口配送とは、少量の荷物を配送する方法です。

貨物自動車の積載効率は2010年以降40%以下

貨物自動車の積載効率は、2010年以降約40%まで低下しています。

積載率のピークは1993年の50.0%~55.0%で、直近の2010年以降から2018年は40%前後です。

貨物1件あたりの貨物量と物流件数の変動より、積載効率が低くて注文件数が多い状況になっています。

EC事業の普及による背景があり、個人が1人1個で小さい商品を注文している可能性が高いです。

道路貨物輸送のサービス価格が急騰

年数売上高物流コスト比率(全業種)名目国内総生産(GDP)
1995年6.13%516.7兆円
2015年4.63%532.1兆円
2021年5.70%541.8兆円

道路貨物輸送のサービス価格が急騰していて、物流コストのインフレが起こっている状況です。

企業向けサービス価格として総平均を含めると、以下4つの項目があります。

  • 総平均
  • 道路貨物輸送
  • 宅配便
  • 海上貨物輸送

そのうち宅配便の価格が大幅に上がり、2013年ごろから右肩上がりになっています。

自粛期間に宅配便を利用する機会が多かった背景もあり、売上高物流コスト比率も大幅に上がっている旨が読み取れるでしょう。

効率的な輸送をするために荷主の積極的な取組が必要

物流は発荷主と着荷主の関係で成り立っていて、いかに効率的な輸送をするかがポイントです。

発注・受注・出荷の流れを経て、ようやく荷物を入荷できます。

この物流のサイクルを早めるために、荷主が効率的な輸送をする積極的な取り組みが必要です。

例えばパレット化で荷積み・荷卸しをしていけば、ドライバーの作業負荷を軽減できます。

荷待ち時間の短縮にも繋がり、発注した商品を届けるまでがスピーディーです。

仮にバラ積みをすると時間がかかり、提供している物流サービスの維持ができません。

荷物量が増えつつトラックドライバーが不足している状況のため、限られた人員の中で一人二役以上の仕事を負荷なくこなせることが求められるでしょう。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて地球温暖化対策計画を改定

2021年10月22日の閣議決定により、地球温暖化対策計画の改定が行われました。

地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画では、2050年カーボンニュートラル宣言、温室効果ガスを2013年度から46%削減などを目標としています。

ゆくゆくは50%に向けて挑戦していき、地球温暖化対策に貢献していくのが狙いです。

特にエネルギー起源CO2の部門にある以下の項目は、大幅な削減ができるでしょう。

  • 産業
  • 業務その他
  • 家庭
  • 運輸
  • エネルギー転換

物流においては、主にトラックの走行時に出る排出ガスが当てはまり、どのように削減するかが課題になります。

最短距離かつ最小限の台数で、効率の良い配送ができれば、地球温暖化対策に大きく貢献できるでしょう。

2024年問題の影響と企業の認知度

2024年問題により、時間外労働の規制が行われます。

本来は時間外労働を活用して長距離輸送ができますが、これからの輸送では実現が難しくなるでしょう。

2024年問題に対する影響と、企業の認知度について解説します。

トラックドライバーの時間外労働の上限規制

2024年度から、トラック運転手は年960時間以内の上限規制が適用されます。

トラックドライバーの年間労働時間は年々下がってはいますが、全産業平均と比較すると長時間労働です。

以下、トラックドライバーと全産業平均の年間労働時間をまとめた表になります。

大型トラック中小型トラック全産業平均
2016年2,604時間2,484時間2,124時間
2017年2,604時間2,592時間2,136時間
2018年2,580時間2,568時間2,124時間
2019年2,580時間2,496時間2,076時間
2020年2,532時間2,484時間2,100時間

上記の表の通り、トラックドライバーの年間労働時間が全産業平均に比べて2割ほど長いです。

労働時間はこれから短くなりますが、労働環境をより改善する余地があります。

例えば今まで時間外労働を使って東京から大阪まで輸送できた距離だとしても、時間外労働が規制されれば実現不可能です。

そこで愛知の物流拠点を活用して大阪から愛知まで運べば、限られた労働時間の中で輸送できます。

後は愛知から東京まで荷物を運んでもらえば、今までの配送が実現できるでしょう。

2024年問題に対する企業の認知度は約5割

該当数知っていて、十分に内容を理解できている知っていて、ある程度内容を理解できている知っているが、あまり内容を理解できていない知らない・わからない
製造業6878.325.614.851.2
電気・ガス・熱供給・水道業484.225.020.850.0
運輸業・郵便業10719.624.315.940.2
卸売業・小売業1586.324.115.254.4

出典:パーソルホールディングス株式会社

パーソナルホールディングス株式会社は、2024年問題についての認知・理解度合いを調査しました。

運輸業・郵便業では、認知しているのが59.8%、認知していないのが40.2%です。

まだまだ認知度が6割ほどしか広がっておらず、法対応に遅れを取っている企業が多い印象があります。

産業全体では5割ほどの認知度で、人材不足や対応コストの物流課題が発生する可能性が高いです。

燃料価格高騰が物流企業に大きな打撃

トラック運送する物流企業にとって、燃料価格は主要費用の1つです。

燃料価格が高騰してしまうと、トラックを走行するたびに費用がかかり、経営に与える影響が大きくなります。

収受額への反映が進んでいない事業者が多く、経営を圧迫しているケースもあるほどです。

価格転嫁できずに倒産する企業が相次ぎ、コロナの輸送量減少で経営悪化が目立ちました。

年度物価高倒産 月別発生件数推移
2018年85件
2019年122件
2020年97件
2021年138件
2022年7月31件

総合物流施策大綱の変化

総合物流施策大綱とは、物流に関してどのような取組をしているかをまとめたものです。

2017年〜2020年度と、2021年〜2025年度の総合物流施策大綱の変化を見ていきましょう。

総合物流施策大綱(2017年~2020年度)

総合物流施策大綱(2017年〜2020年度)では、物流の生産性向上に向けて以下6つから取組を行っています。

  • サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革~競争から共創へ~
  • 物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現
  • ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現~ハードインフラ・ソフトインフラ一体となった社会インフラとしての機能向上~
  • 災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築
  • 新技術(IoT、BD、AI等)の活用による物流革命+物流分野での新技術を活用した新規産業の創出
  • 人材の確保・育成+物流への理解を深めるための国民への啓発活動等

社会状況の変化や新たな課題に対して対応できるように、民間や各省庁等の連携で施策を推進して物流の体制を構築していくのが狙いです。

産業競争力の強化、豊かな国民生活の実現、地方創生と社会インフラの維持のために総合物流施策大綱を実現する必要があります。

総合物流施策大綱(2021年~2025年度)

総合物流施策大綱(2021年〜2025年度)では、新型コロナの流行によって物流業界に大きな衝撃を与えました。

国民の自粛生活でネットショッピングの利用者が増加、店舗に来店するお客さんが減少など、これまでの物流のあり方が変わった時期です。

そこで重視されたのが以下の3つで、物流の先鋭化と鮮明化が課題として挙げられています。

  • 物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流)
  • 労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流)
  • 強靭で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流)

特に注目されているのが生産年齢の人口減やドライバー不足で、早急な課題解決が求められています。

対策として挙げられているのが物流DXで、デジタルの力で人員がいなくても業務を遂行できる仕組みが有効です。

また、震災や噴火などを考慮して、災害時でも機能する強靭な物流ネットワークの構築が必要になります。

まとめ

物流業界では貨物1件あたりの貨物量が少なく、物流件数が多い状況になっています。

1人あたりの注文数が多いことから、ドライバー不足の現状も重なって配送負担が大きいです。

さらに時間外労働の規制が2024年度に起こり、企業の対応が強制的に求められます。

そのため、総合物流施策大綱に従い、サプライチェーンの徹底や持続可能な物流ネットワークの構築が必要です。

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